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インドネシア通信
 

インドネシア通信 Vol.6

土壇場で鉱石輸出禁止

 中進国へ向かって経済発展を続けるインドネシアの重要課題の一つは、産業育成です。これまで原材料や中間財として輸出してきた産品の加工度を上げて、製品として輸出できるようにしたい。川上産業よりも川下産業の育成を重視したい。2015年のアセアン自由市場化を前に、このままでは他国製品の輸入市場になってしまうという危機感が急速に高まっています。ニッケルや銅などの鉱石の輸出禁止もそうした背景に基づいています。

 インドネシア政府は、鉱石・石炭採掘法(法律2009年第4号)と実施規則である政令2012年第24号において、同法施行後5年以内、すなわち2014年1月までに、未加工・未製錬鉱石の輸出を禁止し、国内に製錬工場の設置を促して、鉱業部門の川下産業を育てる計画を持っています。とはいえ、現実には、2014年中に建設が終了する製錬工場は国内にないため、今後、精錬工場を確実に建設するという条件が満たされれば、3年間は鉱石輸出を認めるという現実的な対応を取る方向で検討が加えられていました。

 エネルギー鉱産省によると、国内で鉱業事業許可を持つ企業は数千社ありますが、鉱石の輸出許可条件を満たす企業は125社、うち97社はすでに製錬工場建設に関するフィージビリティ調査を行っていて、28社は工場建設に着手済みとなっています。実業界は、川下産業育成方針を支持しつつも、早急な鉱石輸出禁止は貿易収支悪化を招くとして、製錬工場建設を進める企業には鉱石輸出を認めるべき、との見解を示していました。

 ところが12月になって、ハッタ・ラジャサ経済調整大臣が「鉱石輸出は認められない。なぜなら3年後までに製錬工場が稼働する保証はないからだ」と発言し、国会もそれに同調したため、現実的な対応を採ることなく、2014年1月から鉱石輸出が禁止されることになりました。いきなりの方針転換に、実業界は戸惑いを見せています。

 これには、2014年総選挙・大統領選挙を控え、国民信託党党首でもあるハッタ大臣が国民向けにナショナリズムをアピールする意味もあるでしょうが、実は、鉱石の国際市況が低迷しているという状況が背景にありそうです。鉱石市況が低迷する状況では、輸出を認めても外貨獲得はあまり期待できません。逆に、市況がよくなれば、製錬工場建設よりも鉱石輸出が再び選好され得るでしょう。中長期的に見れば、多少遅れても、鉱石市況が低迷する今が、インドネシアにとって川下産業育成の好機といえなくもありません。

 それにしても、ニッケルや銅などの鉱石輸出禁止は、それを利用する日本企業にとって重大な問題です。加えて、こうした政策の方針変更が政府によって頻繁に行われることも、インドネシアの日系企業の頭痛の種となっています。

松井 和久
松井 和久 インドネシア・スラバヤ在住
銀座セントラルグループ顧問
1962年福島県福島市生まれ。
一橋大学社会学部卒業、インドネシア大学大学院修士課程修了(経済学)
アジア経済研究所入所、1985年から2008年までインドネシア担当。
1995年から2010年まで3度に亘り、JICA専門家としてインドネシア・マカッサルに滞在。
2010年6月からJETRO専門家(インドネシア商工会議所アドバイザー)としてジャカルタ勤務。編著、論文、エッセイ、講演多数。
 
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