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インドネシア通信
 

インドネシア通信 Vol.8

外からの悲観と内からの楽観

2月上旬、所要で一時帰国した際に、何人かの金融関係者とインドネシア経済の今後について議論する機会がありました。彼らは一様に、インドネシアの通貨ルピアの下落と経常収支赤字を懸念しており、新興国のなかでも、とくに通貨下落率の高かったインドネシアのリスクが高いと認識していました。

加えて、2014年は大統領選挙があり、2期10年務めたユドヨノ大統領は憲法の規定により立候補できないため、必ず新しい大統領になります。金融関係者は、経験の少ない大統領でインドネシアは大丈夫なのか、という素朴な疑問を持っていました。

話をしているうちに、彼らが数字しか見ていないこと、1998年の通貨危機のときとの比較で分析しているわけではないことが分かりました。また、インドネシアの政治構造が民主化によって大きく変わり、官僚が以前よりも格段に優秀に動いている点が見えていませんでした。

普通ならば、通貨が下落し、経常収支の赤字が増え、外貨準備が減り、経済成長に赤信号が灯る、資本逃避が起こる、という形で物事が進んでいくように見えます。さらに政治の季節で、大統領が新しい人になる、ということなら、 悲観的な見方が現れてくるのは当然かもしれません。

ところが、インドネシアの中から見ると、悲観論が全くといっていいほど見えてこないのです。インドネシア人エコノミストのほとんどは、2014年後半には経済が回復すると見ていますし、 まわりを見渡しても、人々の消費意欲が急速に落ちている兆候はうかがえません。たしかに、ちょっと前までのようなギラついた雰囲気はやや弱くなりましたが、経済が急速に冷えているという印象はありません。

もちろん、インドネシア経済は構造上の様々な問題を内包しています。工業化がなかなか進まず、ますます輸入に依存する経済になっていることもその一つです。しかし、今のところ、銀行の業績も芳しく、不況で銀行が潰れるような話も出ていませんし、災害に見舞われはしても、そこそこの農業生産を維持しています。2013年の直接投資実施額は2012年を20%以上上回り、投資ブームの余波が続いているとともに、それらの投資がこれから動き出すと、さらに経済成長へのプラスとなります。

何よりも、1年程度落ち込んだとしても、インドネシアは中長期的に発展すると皆が信じていることが重要です。この点については日本の金融関係者も同意するのですが、どうしても日本の見方は短期的な面を重視しがちのような気がします。リーマン・ショックをインドネシアが乗り越えたときは「内需が強いから」と説明したはずです。今回は、あのときと決定的に違う何か別の要因があるのでしょうか。

松井 和久
松井 和久 インドネシア・スラバヤ在住
銀座セントラルグループ顧問
1962年福島県福島市生まれ。
一橋大学社会学部卒業、インドネシア大学大学院修士課程修了(経済学)
アジア経済研究所入所、1985年から2008年までインドネシア担当。
1995年から2010年まで3度に亘り、JICA専門家としてインドネシア・マカッサルに滞在。
2010年6月からJETRO専門家(インドネシア商工会議所アドバイザー)としてジャカルタ勤務。編著、論文、エッセイ、講演多数。
 
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